本コラムは、「フランチャイズ・ビジネス」の本質を深く理解し、応用していくために、弊研究所が研究してきたフランチャイズの歴史をお伝えするものです。今回は、1900~1910年代のアメリカの概要、そしてチェーン・ストアの思想が形成された背景をお伝えします。また、それに相まって誕生した「伝統的なフランチャイズ・ビジネス」について説明しましょう。
2.1900~1910年代のアメリカ
(1)自動車のマス・プロダクション
時代背景とともにお伝えしますと、
・1903年:ライト兄弟が飛行機で飛ぶことに成功
・1913年:フォードが自動車モデルT型の流れ作業によるマス・プロダクション開始
・1914年:8月15日パナマ運河の開通
9月26日連邦取引委員会法が成立、不正取引行為を防止する法律成立
・1917年:4月6日にドイツに宣戦布告
・1918年:1月29日に憲法修正第18条が発効し禁酒を規定
6月28日にヴェルサイユ条約調印、第1次世界大戦が終結
・1920年:戦後の不況開始。同時に都市人口が農村人口を凌駕し、ラジオ放送開始。
(2)チェーンストア・システムの思想の形成
この時代のアメリカでの代表すべきことは、なんといっても自動車「ヘンリー・フォード(Henry Ford)」の偉業です。彼は自動車のマス・プロダクションのシステムづくりを行い、自動車の大衆化を図りました。
この事はアメリカを世界最大の工業国化し、都市化を促進することで国民の生活を向上させました。そればかりでなく、チェーン・ストアの基本的な思想を生み出す大きなきっかけになったのです。
すなわち、1つ1つの店舗の規模は小さくとも、多店舗展開によって総ボリュームを拡大するという考え方です。これは、大量仕入によって、低価格販売を可能にする大量販売のシステムを意味し、メーカーのマス・プロダクションにつながることで、チェーン・ストアのシステムが誕生したと言ってもよいでしょう。
(3)本格的なドラッグストア
1901年には「ウォールグリーン(Walgreen)」が、薬局プラス雑貨、化粧品のドラッグストアを始めました。ドラッグストアとしては「ウォールグリーン」が最初ではありませんでしたが、本格的なチェーン化といえる事例の第1号は、この「ウォールグリーン」でした。
(4)スーパー・マーケットの原型づくりをしたA&P
「A&P」が、1912年にエコノミー・ストアを展開し、現在のスーパー・マーケットの原型をつくりあげました。店舗の標準化、本部の集中管理、キャッシュ・アンド・キャリー・システムの導入等により、「小売業の近代化」が大きく前進しました。
(5)レストラン・チェーンの出現
フードサービスの分野においては、鉄道やホテルの発達を的確にとらえた「フレッド・ハーベイ(Fred Harvey)」が、レストラン・チェーンづくりを試みました。1912年当時でチェーン数として、ホテル12、駅のレストラン65、食堂車60と、合計137店の比較的大規模なチェーンづくりに成功しています。
「フレッド・ハーベイ」は、たんに店数を多くしただけではありません。原料の大量買付けや、産地買い付けの仕組み作りだけでなく、亀のステーキやスープといったように、「フレッド・ハーベイ」ならではの名物料理をつくりあげました。これらの事は、のちにチェーン・オペレーションの運営基本原則の1つになる「専門化」のはしりでありました。
(6)伝統的なフランチャイズ・ビジネス
この時代、「フランチャイズ・ビジネス」の業界では、
・1893年の「ゼネラル・モーターズ」
・1900年の「コカ・コーラ」
・1902年の「レキソール」
といったように、「伝統的なフランチャイズ・ビジネス」が中心でした。まさに「フランチャイズ・ビジネスの誕生期」であったといえます。
to be continued