本コラムは、「フランチャイズ・ビジネス」の本質を深く理解し、応用していくために、弊研究所が研究してきたフランチャイズの歴史をお伝えするものです。今回は、アメリカでのチェーン・ビジネスの潮流について、引き続き歴史を解説していきます。1920~30年代は、「GMS」「スーパー・マーケット」「ボランタリー・チェーン」など、価格競争力を高める様々な仕組みやビジネスモデルが誕生した時代でした。
3.1920~1930年代のアメリカ①
(1)時代背景:「暗黒の木曜日」と戦争
1927年5月21日にリンドバークが大西洋無着陸横断飛行に成功し、1929年10月24日に「暗黒の木曜日」と呼ばれるニューヨーク株式市場の大暴落が起こり、経済の大恐慌が始まった時代でした。
1939年9月5日に第2次世界大戦の勃発、1941年12月7日に太平洋戦争の勃発、1945年8月14日に太平洋戦争の終了といったように、不景気と戦争に明け暮れた時代でした。
(2)小売業の動向
1920年代から30年代にかけて熱狂的といえるくらい拡大したチェーンでも、40年代は停滞もしくは縮小をすることがありました。これはとりもなおさず、暗黒の木曜日と第2次世界大戦によるものです。経営基盤の地固めや、店舗に人員を配置することが不可能であったこともあげられています。
(3)ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア
1902年創業の総合衣料品のチェーン・ストアである「J.C.ペニー(J.C.Penny)」は、都市化の発展と共に、農村部中心のメール・オーダー・ハウスから店舗販売に転換した代表的な企業です。
その発展を皮切りに、衣料品からGMSへと転換する企業が他にも現れ始めました。「シアーズ」が1925年、「モンゴメリーワード」が1927年に出店を開始し、GMS時代の幕開けとなりました。
(4)ボランタリー・チェーンの組織化
チェーン・ストアの発展は、独立小売店に大きな影響を与えました。一部の小売業者は自営のための組織づくりを行いはじめたのです。小売業者の組織化としては、「コーペラティブ・チェーン」と呼ばれる形はありました。
しかし、むしろ活発な動きを示したのが、卸売業者が中心となって組織化を行った「ボランタリー・チェーン」でした。1926年にIGC、1931年に「レッド・アンド・ホワイト(Red and White)」等がありましたが、食品の分野だけしか成功しませんでした。その流れにより、チェーン・ストア反対運動が発展しました。
(5)マイケル・カレンがスーパー・マーケット(SM)を創造
アメリカの大恐慌の最中に生まれたのが、1930年のマイケル・カレンによるスーパー・マーケットの第1号である「キング・カレン(King Kullen)」です。彼はセルフ・サービス方式を採用し、お客様が商品を自由に選択してもらうという楽しさを提供する一方、スタッフを最小限にとどめ、最低のマージンで、最高の回転率をあげることにより、最大の利益をあげるシステムを創造しました。
マイケル・カレンは、自ら世界最大の価格破壊者と名乗ったほどであり、大恐慌のあおりで買物に苦労している国民を救ったのでした。これに影響され、1936年に「A&P」がスーパー・マーケットに転換したのをはじめ、「クローガー(Kroger)」やその他の大手食品チェーンも続々と転向をしていきました。
(6)ロビンソン・パットマン法
チェーン・ストアに反対する運動は、1930年代にもっとも激しくなり、議会においても調査が実施され、1936年7月に「ロビンソン・パットマン法」が制定されました。大量仕入にともなう割引に関しては、次の点に要点がおかれました。
(クレイトン法の修正点)
1.大量仕入にともなう割引は、大量仕入によって売手側にもたらされた節約額に見合う程度以下の場合に限って認められること。
2.このような節約額に見合う割引であっても、その割引の上限が売手側の得意先業者のうちあまりに少数の者のみに得られる場合には、連邦通商委員会が聴聞を行った上で禁止し得ること。
(新規に設けられた要点)
1.宣伝奨励金及びその他の得意先業者に対する支払金が、すべての得意先業者にとって「適度に均等な条件」で支払われるようにしなければ、実質的にこれを禁止する。
2.買い付け業者に対する「仲介料の支払い」、または「仲介料に相当するもの」の支払いを、例え売手側が買い付け業者との直接取引によって、この仲介料相当分を節約した場合であっても禁止する。
To be continued