【フランチャイズ発展史】第3回
「第2回」では、フランチャイズ・ビジネスのタイプのうち、まず「商品商標提供型」についてご説明しましたが、今回は「ビジネス・フォーマット・フランチャイジング」について説明しましょう。
[2]フランチャイズ・ビジネスのタイプ その2
(2)ビジネス・フォーマット・フランチャイジング
①フランチャイズ・ビジネスの旗手
「フランチャイズ・ビジネス」が、フードビジネスの分野に適用されるようになると、アメリカでは一気にフランチャイズ・ブームが花開きました。アメリカのフードサービスは、今や、巨大な産業として位置づけられていますが、現在につながる産業化が達成されたのは1950年代以後であり、その旗手は、みなさんよくご存知の「マクドナルド」と「ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)」です。「マクドナルド」の第1号店のオープンは、1955年4月15日。「KFC」もまた、奇しくも1955年というのは単なる偶然ではありませんでした。
②フードサービスのチェーン化
実は、フードサービスにおける「フランチャイズ・ビジネス」の展開は、1950年代の本格的な産業化以前にもありました。そのきっかけをつくったのはアイスクリームの「ハワード・ジョンソン」です。現在では「ハワード・ジョンソン」はほとんど見かけることができなくなりましたが、この「ハワード・ジョンソン」の登場があったからこそ、フードサービスの分野におけるチェーン・システムが本格的に始動し始めたのです。
③ハワード・ジョンソン
「ハワード・ジョンソン」の創業は1925年で、当時は「ハワード・ジョンソン・ホームメード・アイスクリーム」と命名されたアイスクリームを売っていました。アイスクリームは当時から老若男女問わず広く人気商品であったにもかかわらず、アメリカでは、どの店も変わりばえしないアイスクリームしか売っていないのに気がついた同社は新しいアイスクリームを開発し、色とりどりの28種類のフレーバーを取りそろえたアイスクリーム・ショップとしてチェーン展開を始めたのでした。しかし、「ハワード・ジョンソン」を巨大な外食チェーン企業に育てたのは、特徴あるアイスクリームという商品の力だけではありませんでした。そのアイスクリームを、1935年から「フランチャイズ・システム」の仕組みを使って拡大したことが、成功の大きな要因となりました。
④フードサービスにおけるフランチャイズの開始
フードサービスの分野における「フランチャイズ・チェーン」は、実は「ハワード・ジョンソン」が第1号ではありません。1919年に創業された「A&W」のほうが遥かに早かったのです。沖縄に旅行したことのある方なら「A&W」の名前をご覧になったことがあるでしょう。沖縄の牧港や名護ではアメリカン・フィフティーズそのままのDrive-inスタイルの店舗が現役で頑張っています。「A&W」は、今日ではハンバーガー・レストランとして事業展開していますが、創業当時は「A&W」というオリジナル・ブランドのルートビアというソフトドリンクを提供するチェーンでした。後に産業化を達成したホテルチェーン「マリオット」の創業当時の最初のビジネスは、この「A&W」のフランチャイジーでした。「マリオット」の創業は1927年5月20日で、1926年ユタ大学を卒業したJ.ウイラード・マリオットが、展開が始まったばかりの「A&W」のフランチャイズ・ビジネスに目をつけて加盟したのがその始まりでした。当時は、まだ「ハワード・ジョンソン」は「フランチャイズ・ビジネス」を手がけていませんでした。
⑤フランチャイズ・ビジネス化
先ほども申し上げた通り、「フランチャイズ・チェーン」をビジネス化し大企業化したのは「ハワード・ジョンソン」が第1号になります。「ハワード・ジョンソン」は「フランチャイズ・システム」のメリットをフルに活用しました。もし「ハワード・ジヨンソン」が成功していなければ「フランチャイズ・ビジネス」が一般に広まるのは数十年遅れ、放置されていたかも知れません。
その後の「マクドナルド」や「KFC」が産業化を達成する大きな要因の一つとして「フランチャイズ・システム」の採用があげられますし、それはフードサービスだけに留まらず、ホテルのチェーン化にも大いに効果を発揮しました。
⑥ホテルのフランチャイズ化
ホテル業界ではじめてフランチャイズ・チェーン化し発展させたのは「ホリデー・イン」の創業者ケモンズ・ウイルソンです。彼はホテル・チェーンに「フランチャイズ・システム」を採用したことで、サービスが悪く料金の高いホテル業の分野に革命を起こし、現在まで続く一大チェーンをつくりあげました。
⑦フランチャイズ発展の背景
「フランチャイズ・ビジネス」の発展の背景には、当時のアメリカの激変する社会環境がありました。大量生産、大量消費の経済が急伸したことによる中間層の増大、彼らの住宅の郊外への拡大、ショッピングセンターの発展、チェーンストアの成長(スーパーマーケットやディスカウントストア等)による小規模小売業者への圧迫、第2次世界大戦後の復員軍人の就職難や農民の転業の増加など様々な事象が同時におこり、さらに、もともと開拓者精神旺盛なアメリカでは、個人が起業し夢を実現するアメリカン・ドリームを尊重する風土があったため、成功した事業モデルを本部から買って自ら加盟店を経営し成功することのできる「フランチャイズ・ビジネス」が歓迎されたのでした。
また、戦後のアメリカ社会にはベビーブームが巻き起こって多くの若い家族を生みだし、その結果、消費の主流をベビーブーマーと呼ばれる世代が占めるようになりました。彼らは核家族化を好み、住まいを郊外に求め、モータリゼーションを起こすとともに、ショッピングセンターを発展させていきました。
ベビーブーマーは外食やテイクアウトを好んだので、その需要に応えるため、フードサービスもチェーン化を迫られました。こうした時代背景から、フードサービスのチェーン化に「フランチャイズ・システム」が採用されたのは自然ななりゆきでした。しかも、急速なチェーン化が要請されていたのです。
⑧ビジネス・フォーマット・フランチャイジングの誕生
フードサービス分野における「フランチャイズ・システム」は、従来の「フランチャイズ・システム」の商品の流通や販売権を供与するためのシステムをさらに進化させ、独自の「フランチャイズ・パッケージ(ブラント、システム、ノウハウ、スーパーバイジング等)」化を確立し、やがて、本部がビジネスの仕組みそのものを加盟店に提供する「ビジネス・フォーマット・フランチャイジング(business format franchising:経営方式提供型)」を誕生させたのでした。