第2回は「商品商標提供型」、第3回は「経営方式(ビジネスフォーマット)提供型」についてお話ししましたが、今回は、その後に登場した「コンバージョン型」について説明いたしましょう。
[2]フランチャイズ・ビジネスのタイプ③
(5)コンバージョン・フランチャイジング
①コンバージョン・フランチャイジングの目的
1970年代に登場したのが「コンバージョン・フランチャイジング(conversion franchising:組織転換提供型)」です。これは、独立した既存の個人事業主や小規模「フランチャイズ・チェーン」が現状のままでは将来の存続が危ういと考えたときなどに、他の大規模「フランチャイズ・チェーン」に加盟することによって、大チェーンのスケール・メリットを享受できるようになるという点に特徴を持つ、第三のフランチャイズの仕組みです。
②小規模転換の事例
小規模「フランチャイズ・チェーン」の転換の例としては、ファーストフードの「サンディーズ」が「ハーディズ」に転換した事例や、独立した個人事業としては、ホテルやモーテルが大規模フランチャイズ・チェーンに加盟した例などが多数見受けられます。全米各地の多くの単独経営のホテルやモーテルが、「ホリデイ・イン(Holiday Inn)」や「ラマダ・イン(Ramada Inn)」などに代表されるフランチャイズ・チェーンに加盟することによって、だれもが知る商標を看板に表示し、広告宣伝などお客様獲得のための仕組みや、予約を受け付けるためのネットワークが使用できるようになるなどの新しい武器を手に入れ、優位性を獲得して生き残ることができたのでした。
③小規模から全国的に
1970年代から1980年代の初めにかけて、不動産を扱う「レッド・カーペット・レアルティ(Red Carpet Realty)」は、個人事業の不動産業者をターゲットに、統一した「チェーン名」で「フランチャイズ・システム」に組織転換できるというパッケージを提供し、フランチャイズ化を図りました。零細の不動産業者は、当時大企業に経営を圧迫されていましたが、このフランチャイズに加盟することによって、情報のネットワーク化、全国的な規模の広告、卓越した教育カリキュラムなどによって業績を高め、成功する加盟店が多数生まれました。
④コンバージョン型が盛んな分野
「コンバージョン・フランチャイジング」では、日本でもおなじみの「センチュリー21」(不動産業者)も、世界でフランチャイズ展開を進めている成功事例です。この仕組みは、さらに、弁護士事務所、歯科クリニック、美容整形クリニック、税務・会計事務所、人材派遣会社、健康機器販売会社、家屋・室内メインテナンスなど、とりわけ、高度な専門的分野を含むサービス業において、幅広く導入されています。
また、年配の方ならご記憶があるかと思いますが、日本にコンビニという新業態が入ってきた当初は、現在とは違って、既存の酒屋・パン屋・食料品店などを加盟させてコンビニに転換するという方式で出店していました。これも「コンバージョン・フランチャイズ」の事例と考えることができるでしょう。
[3]ヨーロッパにおけるフランチャイズ・ビジネスの歴史
ヨーロッパにおける「フランチャイズ・ビジネス」の発祥は定かではありませんが、アメリカの幌馬車の行商人がフランチャイズ・ビジネスの原型ならば、やはり商人がキャラバンをつらねてエジプトやパレスチナの聖地を訪れていた中世期に、公益組合が各地にバザールを設け様々な商売を許諾し保護していたといわれており、これが、ビジネスとしてのフランチャイズの原形に当たるということができます。
この商売の方法が中世のヨーロッパに紹介され、やがて「ギルド」のように、商工業者が領主たちから事業権を一種の利権として認めてもらう見返りとして、上納金を納め保護を受ける~という制度が「フランチャイズ・ビジネス」の原型になりました。しかし、この「ギルド」は、18世紀~19世紀に入り、産業革命と市民社会の進展につれてその独占的権利が攻撃の的とされ、近代的国民国家の形成が遅れたドイツを除いて衰退してゆきました。ヨーロッパにおいて今日のような本格的フランチャイズ・ビジネスが注目されるには、そのずっと後である20世紀後半、アメリカ兵とともに「コカ・コーラ」のボトラーが大西洋を渡って上陸し、更に「マクドナルド」や「ケンタッキー・フライド・チキン」が英国に進出するのを待たなければなりませんでした。