本コラムは、「フランチャイズ・ビジネス」の本質を深く理解し、応用していくために、弊研究所が研究してきたフランチャイズの歴史をお伝えするものです。今回は、引き続き1950~1960年代のアメリカについて解説します。フランチャイズ・ビジネスの創成期から発展期に移り変わっていった時代となります。
7.1950~1960年代のアメリカ②
(1)フードサービス産業化の時代
第2次世界大戦後の2大巨人といわれているのが「マクドナルド」と「ケンタッキー・フライド・チキン」です。戦前の「ハワード・ジョンソン」と戦中の「ビッグ・ボーイ」はフードサービスが大チェーンになりうることを実証しました。一方、「マクドナルド」と「ケンタッキー・フライド・チキン」の2大巨人はフードサービスが大産業になりうることを実証しました。
「マクドナルド」は、1955年にイリノイ州シカゴ郊外のデス・プレーンズに第1号をオープンし創業しました。当時どこのレストランでも最低30セントしていたハンバーガーを、わずか15セントで販売したのでした。その店は現在でも「マクドナルド」のシンボルである「ゴールデン・アーチ」がかかった店舗でした。
(2)マリオットの多角化と株の公開
「マリオット」の創業は、1927年5月20日ですが、1967年に事業の大転換を図りました。コーヒー・ショップの「ビッグ・ボーイ(Big Boy)」やローストビーフ・サンドイッチのファーストフードの「ロイ・ロジャース(Roy Rogers)」の買収をはじめ、数々の多角化戦略を展開していきました。また「マリオット」は、1935年に株式の公開をいち早く行いました。
(3)ホリデイ・インの創業
「ホリテイ・イン(Holiday Inn)」の創業は、1952年でした。創業者のケモンズ・ウイルソンは、ホテルの革命児といわれています。彼の発想の原点は、彼自身が旅行をした時に不愉快な思いをしたことでした。その想いから、彼は低料金の宿泊、サービスの標準化、セルフサービス・システムの採用といったように革新的な科学的手法を適用し、さらに「フランチャイズ・チェーン」の「システム」化によって急速にホテル数を拡大していったのです。
(4)団体給食の新分野の開拓
この時代には、「ARAサービス(ARA Service)」や「サーボメーション(Servomation)」による自動販売機を中心とした病院給食や、「サガ(Saga)」が学校給食のマーケットの開拓をしていきました。
(5)本格的なフランチャイズ・ビジネスの展開
①フランチャイズ・システムの普及
第2次世界大戦後、小売業、フードサービス業、サービス業のいわゆる流通サービスに携わる企業が続々と「フランチャイズ・システム」を採用し、店舗拡大戦略の一つとして有力な武器としたのでした。
また、フランチャイズ・ビジネスが急速な発展を遂げた背景として、「フランチャイズ・システム」そのものが、社会的な認知を得られてきたこともあげられます。
フードサービスの企業の株式を公開したのが、1960年代の始めでした。「フランチャイズ・ビジネス」の企業の株式の公開は、1960年代の後半に集中しているように、かなり早期に株式の公開が行われたのでした。
②更なる背景
その他にも、フランチャイズ・システムの発展を後押しした背景がいくつかあります。例えば、政府は第2次世界大戦の復員軍人に対して融資制度を設けました。「フランチャイズ・チェーン」に加盟を推奨し、独立した事業を始めるチャンスを与えることによって、失業者を出さないように図ったのです。
さらに重要なことは、社会が豊かになると同時に、アメリカ人特有のフロンティア・スピリットが再び芽が吹き出したのです。仮に小さなビジネスであっても、「自分の店」「自分がボス」という、アメリカ人の旺盛な独立心がフランチャイズ・ビジネスの発展の後押しになりました。
この時期の「フランチャイズ・ビジネス」の中心は、クリーニング、自動車サービス、レンタル、ファーストフードなどです。また、フードサービスの分野の「フランチャイズ・チェーン」と、サービス業の分野に新たな視点が生まれ、発展しました。1950年代を「フランチャイズ・ビジネス」の創成期と呼ぶならば、1960年代は発展期にあたるといって良いでしょう。
To be continued