本コラムは、「フランチャイズ・ビジネス」の本質を深く理解し、応用していくために、弊研究所が研究してきたフランチャイズの歴史をお伝えするものです。
アメリカのフランチャイズ発展史を語る上で外せない、「ケンタッキー・フライド・チキン」について、引き続き、その誕生の経緯を追いかけていきましょう。
<「歴史から学ぶ本質論」シリーズの過去記事はこちら>
[ケンタッキー・フライド・チキン](3)
(2)カーネルの商品開発
① 圧力釜によるフライド・チキンの製造
「サンダース・カフェ」で提供していた伝統的なフライド・チキンは、既に多くの方から好評を博していました。
その料理法は、鉄の厚い釜にオイルをほんの少量加え、そこに卵、ミルク、シーズニング・フラワーをまぶした骨付きチキンを入れ、ゆっくり蒸すように揚げていました。その味わいは好評でしたが、揚げるのに30分以上かかってしまうという課題も抱えていました。
そこで、カーネルは圧力釜でフライド・チキンを作ることに没頭。長い時間をかけ、試行錯誤をした結果、圧力釜の圧力と調理時間のちょうど良いバランスを発見し、新料理法を完成させたのでした。
これにより、30分以上かけて揚げていたものが、たった7分間に短縮させることに成功しました。これはカーネルの妥協を許さない考え方が生んだ成果であり、まさにオリジナルと言えるフライド・チキンが誕生したのです。
② 11種類のスパイス
1939年、カーネルは7つの国から数十種類のスパイスを集めていました。研究の結果、11種類のスパイスを選出。これを配合して秘密のスパイスを完成させました。
そして、このスパイスでチキンを味付けし、100%の植物油のショートニングを使い、圧力釜でジューシーに仕上げたフライド・チキンが誕生しました。
③ スパイスへのこだわり
そもそもスパイスとは何なのか、改めて確認しましょう。熱帯、亜熱帯、温帯地方に産する芳香性植物の根や樹皮、種子を乾燥させたもので、古来より料理をおいしくしてくれる植物として重宝されました。ヨーロッパの歴史を振り返ると、スパイスを求めて新大陸の探求をし、スパイス獲得のために植民地を巡る戦争が諸国で発生するなど、スパイスは極めて重要な存在であったと言えます。
70種類にもおよぶスパイスは、それぞれ香りと味の特徴があります。基本的な働きは矯臭作用(くさみけし)、賦香作用(においづけ)、辛味作用(からみづけ)、着色作用(いろづけ)の4つです。
使用方法によっては料理を台無しにしてしまう可能性があります。しかしまた、何種類かのスパイスをブレンドして使うと、熟成効果が出てより深いものをつくりあげていくこともできるのです。
カーネルの11種類のスパイスは、この特徴を生かしたもので、「KFC」のノウハウの一つとして世界中から親しまれています。
この「KFC」のスパイスは、アメリカの本社で調合されたものを各国に送るものですが、秘中の秘とされていて、このキーパーツを知る人は、アメリカの本社でも数名です。調合を行っている工場に入るのには、その数名がキーを同時に一斉に差し込まないと開かない仕組みになっており、そのノウハウは極めて厳重に取り扱われています。
④ 「QSC」の基本コンセプト
現代のフードサービスの基本コンセプトとして、「QSC」という概念があります。
Q:Quality(質)
S:Service(サービス)
C:Cleanliness(清潔感)
カーネルは、料理の「質(Quality:Q)」に自信をもっていました。そして、スパイスの調合と圧力釜による調理によりさらに磨きをかけました。
そして、様々な商売をしてきたカーネルは、「サービス(Service:S)」と「清潔感(Cleanliness:C)」も充実させていったのです。カーネルならではのこだわりにより、フードサービスの基本のコンセプトである「QSC」を完成させたのでした。
To be continued