平昌オリンピック関連の報道が世界中に溢れるなか、アメリカのAP通信社が少し変わったレポートをしているのが目につきました。本日は、韓国を代表するファストフードとして「チキン」を紹介する記事から、韓国のチキン店フランチャイズ事情をご説明しましょう。日本では韓国の代表的な鶏肉料理であるとみなされているサムゲタンですが、実は、韓国ではこれを「チキン」と呼ぶことはありません。韓国人にとって「チキン」とは広義の鶏肉料理を指す言葉では無く、フライドチキンや鶏のから揚げのような鶏肉を焼いたり揚げたりしたものに様々な味付を加えたファーストフード、およびそれを取り扱う専門店を指す言葉なのです。甘辛いソース味などが人気のフレーバーですが、他にもバリエーションは多彩です。韓国の2016年の1人当たりの鶏肉消費量は13.8キロで、2000年の6.9キロに比べ2倍に増えています。換算すると国民1人当たり年間約14羽を食べている計算ですが、実はこの成長をけん引したのがフランチャイズ・チェーンなのです。

韓国の町中はチキン店であふれており、現地では「韓国はチキン共和国」という自虐的表現が流布しているほど。2017年の韓国内チキン・フランチャイズ加盟店の数は24,453店舗。個人が運営するチキン店まで入れると4万店舗を超えるといわれていますが、2015年のチキンのフランチャイズチェーン加盟店の年平均営業利益は2360万ウォン(約236万円)で、これは韓国企業の新卒社員の平均年俸程度の額です。2014年の全国平均で、チキン店のうち従業員5人以上の事業規模の店はわずか4%ほどで、残りはほとんど小規模の家族経営店です。イートイン可能な店もありますが、店舗の賃借料の負担を軽減するために宅配専門店が多く、出店も多いが撤退も目立つのが実情です。マクドナルドが設立した「ハンバーガー大学」に対抗するように、大手FC本部「ジェネシスBBQ」はソウル郊外に「チキン大学」を設立しています。そこでは商品開発を行ったり加盟店オーナーが研修を受けたりしているだけでなく、一般の人にも体験型見学スポットとして人気があります。

ウィンタースポーツ最大のイベントであるオリンピック期間中、韓国国民の多くはテレビを通して毎日この歴史的イベントを観戦していたために料理どころではなかったようで、手軽な食事として宅配チキンの注文が急増したと報道されていました。実際、某フランチャイズチェーンが投入したチキンの新商品は、平昌五輪の開幕式があった2月9日から販売量が急増、2月10日の販売量は前週同日比で159%アップ、日韓がメダルを競い合ったスピードスケート女子500メートル決勝戦が生中継された2月18日は同135%アップを記録したとの情報がリリースされたほどです。

韓国の多くのチキンチェーンは、これまで何度も日本市場への進出を試みてきましたが、本国におけるような人気を得るには至らず、撤退したり、大久保や赤坂など韓国料理店の多い地区に限定して出店するに留まっています。一方、最近、日本では韓国発のチキン料理として「チーズ・ダッカルビ」が注目されていますが、実は、よくTVの取材にも応じているこのブームの仕掛け人は、弊研究所の社長・内川昭比古が長く懇意にしている韓国の大手チキン・フランチャイズ本部の出身者なのです。このメニューが日本の食に根付くかどうか、行く末を見守りたいと思います。