【アパレル業界でも社内FC制度(のれん分け)の導入が本格化か】

外食業、サービス業では当たり前ですが、アパレル業界にはまだまだなじみの薄いフランチャイズ展開、社内フランチャイズ(のれん分け)制度。しかし、これからはその流れが変わり、導入を検討するアパレルメーカーが増えてきそうです。21世紀に入って以来、アパレル業界といえば、自社商品の製造・小売りを一貫して行なうSPA型ブランドが増加し直営店中心でした。しかし、ここ数年間、アパレルメーカーは、直営店での売上が伸び悩み、地方では売上不振で撤退する店舗も出てくるなど、苦戦が続いています。

売上が伸び悩んでいる地方店では、販売スタッフの人手不足やデパートからの優良館の出店と抱き合わせの売上不振の地方館へのバーター出店などで、つもり積もった店舗投資が響き、キャッシュフローが悪化傾向です。現在、アパレルメーカーは全般的に、直営店の出店に対して今までにも増して慎重になっており、出店しても店舗利益が獲得できないケースが増えるなど、直営店中心の出店戦略の見直し、それに代わる経営戦略の策定が急務の状況です。

新聞やWEBニュースで公表されているユニクロの地方店舗における社内フランチャイズ(のれん分け)制度の導入やワールドのフランチャイズ事業への取り組みは数年前から実施されています。アパレル業界でもこの動きが本格化する時期が近づいてきているといえるでしょう。

社内フランチャイズ(のれん分け)制度の導入は、加盟金やのれん代などの初期収入で会社のキャッシュフローが改善されることや、優秀な店長の外部流出を防ぎ、尚且つ、社内独立制度を社内の人事制度として打ち出すことで新たに良い人材が集まってくることから、外食業やサービス業では主流の制度です。アパレル業界の新しい打ち手として、フランチャイズ展開、社内フランチャイズ(のれん分け)制度の導入が主流になるのも、そう遠くないと思います。

 

では、1960年代から現在に至るまで、日本におけるアパレル業界の歴史を見て、マーケットの変化やその時代の各アパレル会社の打ち手を確認して見ましょう。

 

【1960年代~ オーダーメイドから既製服への移行した時代】

1950年代前半までは、和服と同様にオーダーメイドが中心でした。1960年代の高度成長期になり、アパレルメーカーによる既製服が中心となります。これによってアパレル業界が大きく変わり百貨店を中心に既製服の売場が広がりました。

 

【1970年代~ 専門店の時代】

「三愛」や「鈴屋」といった婦人服専門店のチェーン店や地方の商店街の専門店がオープンし、アパレルメーカーの卸した商品を専門店が販売するといった商流が中心となります。この時期には「アンアン」「ノンノ」「JJ」などの、ファッション誌が多く創刊された時代です。

また一方で、アパレルメーカーや商社が海外のファッションデザイナーのブランドとライセンス契約を結び、日本国内で商品を製造・販売し、直営店をオープンさせたのもこの時代になります。

 

【1980年前後 DCブランドの時代】

DCブランドブームを迎え、アパレルメーカーは日本人のデザイナーズブランドを次々とプロデュースし、オンリーショップを路面に出店するほか、百貨店やファッションビルに次々と出店しました。

また、1985年(昭和60年)のプラザ合意による円高でインポートブランドの直営店がオープンしたのもこの時代になります。

 

【1990年代~ SPA型アパレルブランドの誕生】

1990年代初頭にバブル経済が崩壊、長期の消費不況の時代に突入。アパレルショップの売り上げは急落し、商品コストを抑制するため生産拠点を中国に移転する企業が続出しました。また閉店する専門店も増加し、アパレルメーカーは、自社商品の製造・小売りを一貫して行なうSPA型ブランドが増加し直営店中心となります。

 

【1990年代半ばから2000年代はグローバルなファストファッション参入】

国内ではユニクロ、海外からZARAやH&Mなど多くのファストファッションが参入して、銀座、丸の内、表参道、新宿など都心の一等地に直営店を相次いでオープンさせています。アパレルブランドの商品の同質化が進んだのもこの時代です。

 

【2000年代 アパレル業界の行方】

国内のアパレルマーケットは、少子化の影響もあり縮小傾向にありますが、多様化するニーズに対応した新しいマーケットの開拓も進んでいます。例えば、今までは自由な時間が無かった団塊の世代が、定年後におしゃれを楽しみたいという要望に合わせてシニア層をターゲットにしたマーケットを拡大です。また、少子化の影響で、子供服にかける金額も上がって来ています。

今後のアパレル業界では、より一層の地域に密着した経営者感覚を持ちそれぞれの顧客に合わせた店舗を運営できる人財が必要となってくると思います。

まさしく自社の店舗で育てた人財をどのようにして外部流出を防ぎ、次のステージへとモチベーションへと上げさせる人事制度やキャリアアップの仕組みを作ることができるのか、これからのアパレル業界の鍵になっていくことでしょう。