本コラムは、「フランチャイズ・ビジネス」の本質を深く理解し、応用していくために、弊研究所が研究してきたフランチャイズの歴史をお伝えするものです。今回は、1950~60年代のアメリカについてお伝えします。第二次世界大戦終了後、ベビーブームが到来し、経済発展とともに新たな業態が誕生し始めた時代です。

6.19501960年代のアメリカ①

(1)第2次世界大戦後の社会経済的環境
①時代背景

・1945年11月25日に国連憲章が発効し国連が発足しました。

・1947年6月5日に国務長官マーシャルによるヨーロッパ経済復興援助計画の発表と、12月23日の対ヨーロッパ援助法が成立。NATOへの協力といったように、海外援助が大きな経済政策の1つともなっていきました。

・1950年6月25日には朝鮮戦争が勃発、1951年10月24日に終結しました。

・1957年10月に、ソ連の人工衛星スプートニクの打ち上げ成功に対して国民の動揺が起こりましたが、1958年1月31日にアメリカも最初の人工衛星エクスプローラを打ち上げ、宇宙戦争の時代に突入しました。

・1964年8月にトンキン湾事件が起き、アメリカは実質的にベトナム戦争に介入を始めました。

②社会経済的環境

戦後のベビーブームが起こり、かつ医療の進歩により死亡率が低下することで、人口が増加した時代です。さらに、外国からの移民や避難民の流入もあいまって、1970年にはアメリカの総人口は2億人を超えました。

また、人口移動もありました。まず太平洋や南西部は、温暖な気候、安価な土地など立地条件に恵まれ、工場建設を中心とした人口の移動が多く、特にカリフォルニア州の増加はめざましく、同州はアメリカの経済の中心になってきました。

 

人口の移動は都市化現象を起こし、戦時景気で小銭を貯めた人の建売住宅の購入、高速道路の発達と自動車の普及によって住宅の郊外化現象が起こりました。戦後やや後退の時期もありましたが、引き続く好景気は、アメリカ「豊かな社会」を築いていきました。一般的にも収入は平均化し、テレビの普及と相まって、マスプロとマスセールの大量消費時代となりました。

 

大学教育も門戸が大きく広がり、教育に関心を持つ人々が増え始めました。第2次世界大戦や朝鮮戦争への出征兵に対する「GIビル」の権利の一つとして、大学進学費が与えられたのも進学率が増加したのに大いに貢献しています。また、戦後生まれのベビーブーマー達は、すでに豊かな時代に突入してから育ったので、「大学進学は当たり前」という意識も広がりました。

 

(2)戦後のアメリカ小売業の旋風

1938年の「チェーン・ストアに対する死刑宣告法案」は廃案になったとはいえ、「A&P」「ウールワース」「J.C.ペニー」といった戦前の代表的なチェーンは、第2次世界大戦後もパットマン後遺症により成長が抑制されました。しかし一方で、新たな業態の開発が行われました。

①ディスカウント・ストアの発展

1948年にユージン・ファーカフは、ニューヨークのマンハッタンに、ディスカウント・ハウスの「E.J.コルベット(E.J.Korvette)」をオープンさせました。これは戦後帰国した人たちに対し、自宅で必要な家庭電器製品を、メーカーの定価よりはるかに安いディスカウント価格で販売しました。当然のことながら、メーカーや他の小売業者から圧力がかかりましたが、これには屈しませんでした。

 

さらに、1964年、ユージン・ファーカフは、取扱商品の範囲を広げ、同じニューヨークのロングアイランドに、「より多くの物をより安く」という「経営理念」のもとに、「ディスカウント・ストア」をオープンさせました。

なお、現代でも高いブランド力を誇るディスカウント・ストアである「ウォルマート(Wal-Mart)」「Kマート(K―Mart)」「ターゲット(Target)」は、1962年に第1号店をオープンさせ、今日の隆盛を呼びました。

 

②ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア(GMS)

またメール・オーダー・ハウスから出発した「シアーズ・ローバック」や、総合衣料品店から出発した「J.C.ペニー」は、日常家庭で使われる商品の総合的な販売する新たな業態としての、「ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア(GMS)」として生まれ変わりました。

 

③「専門店」の発達

1960年代後半から始まった消費の大衆化は、ファッションを普及させました。総合された店舗もさることながら、専門的に絞り込んだ専門店の「ニーズ」の高まりをみせたことが大きく専門店時代を創出しました。

 

④スーパーマーケット・百貨店

「スーパーマーケット」は、第2次世界大戦後は、「セーフウエイ(Safeway)」「クローガー(Kroger)」のナショナル・チェーンと一定の地域におけるローカル・チェーンと2つの発展的プロセスを示しました。

 

一方、「百貨店」は「ディスカウント・ストア」や「ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア」の追撃を受けて後退を余儀なくされましたが、「ショッピングセンター」の発展とともに復活してきたことは大いに注目されました。

 

(3)ショッピングセンター時代の到来

 

アメリカで最初に計画的な「ショッピングセンター」が建設されたのは、1920年代の中頃といわれています。本格的な「ショッピングセンター」の誕生は、1950年J.B.ダグラスによるものです。ワシントン州シアトル地区に「ノースゲート・ショッピングセンター(Northgate Shopping Center)」をオープンさせ、これは今なお今日のアメリカにおける「ショッピングセンター」のモデルとして評価されています。

「ショッピングセンター」は、住宅の郊外化現象や消費の大衆化によって発展してきました。生活者のための「計画的な商店街」として、ワンストップ・ショッピング(一括購入)という利便性とコンパリゾン・ショッピング(比較購買)の楽しさをつくりあげることを狙いました。「百貨店」や「ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア」をキーテナントとして据え、「バラエティ・ストア」「ドラッグ・ストア」「専門店」「レストラン」その他の多様なサービス機関から構成。また、広大な駐車場で自動車客に便宜をはかり、いまやアメリカの郊外生活者にとってはなくてはならない機能として存在しています。

To be continued